同情するなら愛をくれ


舞台かんそう

『Beware of pity』Barbican


CompliciteとSchaubühne Berlinの合同公演。

芝居はドイツ語に英語字幕です。完全ソールドアウトの満席でした。


若き軍人アントンは、ある日地元の富豪・ケケスファルヴァの城に招かれ、酔った末に彼の娘イーディスをダンスに誘うが、彼女は障害者で歩くこともできない身体だった。

後日、花束を持って城に謝罪に訪れたのをきっかけに、イーディスへの負い目から足繁くケケスファルヴァ家に通い始めるアントン。そんな彼に想いを募らせるイーディスは、彼の同情心を巧みに操ることで拘束し、二人の歪つな関係がやがて破滅へと向かっていく様が、第一次世界大戦の幕開けを背景に描かれます。


悲劇を招くのは往々にして悪意ではなく弱さである、

真の同情と憐憫を混同してはならぬ、という教訓が繰り返されますが

じゃあどうすればよかったの…!と思うのも事実。

不憫な少女が孤独な車椅子生活を強いられていれば、新しい治療法があるらしいよ!きっと治るよ!って無責任な事を言って励ましたり、

あなたが来てくれると彼女も元気になるみたい。とか言われたら、想いは返せなくても

私でよければ!って張り切っちゃうの、大概の人はやってしまうもの…。

しかし十代の少女が自分の不運を人質に周りの大人を完全に支配している、異様な力関係の城の中が怖いです。突然のヒステリーや狂人じみた早口の語り、無理に歩こうとするときの尋常でない関節の曲がり方をちょっと直視できない感じにすることで、

ちゃんと彼女を恐怖対象として認識するよう誘導される。

ときに博物館の展示ケース、ときに電車に見立てられるガラスの箱のセットも不気味。

戦争から生還した現在のアントンが、ステージ奥のスクリーンに映し出された

人類の悪しき歴史の映像をぼんやり見つめながらゆっくり暗転する様子が尾を引くラストでした。


Beware of pity|Barbican


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