Yerma

舞台かんそう
『Yerma』@ The Young Vic


ファッションブロガーの主人公は、子宝に恵まれず、子どもを熱望するあまりやがて結婚生活も仕事も破綻し、次第に気がふれていく。。。というあらすじ。

原作はスペイン語でかなり宗教色が強いらしいですが、それをまるっと現代ロンドンに置き換えて微塵も違和感がないのがすごい。オリジナルでは主人公が教会の告解室で懺悔していた内容を、今作では不妊の悩みをブログで発信する形にアレンジされていて、それが夫婦間の軋轢に一役買っているところとか本当もう頭を抱える。


誰のせいとか何もなくてそれが一番辛いのですが、強いていえば夫は本気で不妊治療に取り組むのならあんなに家を空けるべきでなかったし、治療費がかさんで破産する前に、養子縁組みや代理出産などの代替案を一度は二人で検討するべきだったと私は思います。そういう選択肢が一つずつ消滅していく様が、細かいエピソードを消費して実に丁寧に描写されるわけなんですが!

野外音楽フェスで、泥濘む大雨の中、おかしな薬をキメたせいで他人がぐるぐる見知った顔に見える場面が特にゾッとしました。高熱を出すとよくああいう夢を見ます。


舞台セットは透明の箱ひとつで、その中で全てのシーンが演じられていきますが、粘膜とも陳列ケースともとれるそれが不気味でした。主人公が吐き出したジュースが観客側のガラスに飛び散るシーンがあるのですが、ビリー・パイパー(完全にアイドルから憑依系の役者に脱皮!)もまさか客席に向かって吐瀉物を撒き散らす日が来るとは思ってもいなかったにちがいない。


公演の公式サイトには、この芝居を見て精神的ダメージを受けた人のために電話カウンセリングの番号が記載されていました。一定の年齢以上の女性は自動的に抉られてしまう内容なので、また演劇はフィクションの殻を被っておきながら時に一番オブラートに包まない媒体なので、なんというか適切なフォローだったと思います。



Mayumi's Soliloquy

まゆみのソリロクィ

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