Lunchbox theatre
会社の昼休みに1時間未満でサクッと観劇できる、
ランチボックスシアターというものに行ってきました。
Brian Friel作/戯曲『Afterplay』
1920年代のモスクワ。
寂れたカフェで偶然知り合い、身の上話に興じたソニアとアンドレイは、
次の晩もまた同じカフェに居合わせる。
昨晩の話題の続きを織り交ぜながら再び話し込むうちに、はじめは断片的にしか語られなかった互いの人生の実情が補完されて全体像が見えはじめ、同時に最初の晩の会話の中で二人がついた大小様々な嘘が次第に露呈する…というあらすじ。
ソニアとアンドレイはそれぞれチェーホフの「ワーニャ伯父さん」「三人姉妹」の登場人物ですが、チェーホフを一切知らなくても問題ありません。
アンドレイがつく嘘は、オペラ座付きのオーケストラのバイオリニストだと言っていたのが
実は路上で演奏する大道芸人だったり、
妻ナターシャとは死別したのではなく愛想を尽かされて出て行かれたのであったり、
少しでも自分を盛って見せたい見栄からくる虚言なのに対して、ソニアのそれは
概ね事実に沿ってはいるけど一番重要な心理の部分が省いてあったり、
話の要をさらっと誤魔化したりしてあって、保身に対するそういった男女差の描写が細やかでした。
あとアンドレイのたくさんの小さな嘘は基本装飾目的だけど、
ソニアの一番大きな嘘は彼女のギリギリの虚勢を支える最後の砦だったと思います。
彼女の台詞にある「孤独のツンドラ」は寒そうで辛そうで心から気の毒。
ラスト、ソニアがアンドレイからの手紙の申し出を断ったのも
私は「そんな!せめて寂しい同士文通くらいしてもいいのに!」と思ったけど、
一緒に行った友人は「女の最後のプライドかな…」とか呟いていてむしろその感想がかっこいいよ!
本作品はランチボックス枠に収めるために原作を45分間の戯曲に直してあるようでした。チケットも£7で、ちょっといいカフェでランチしたらすぐそれくらいいくよねーという絶妙な価格設定。
客層は近くのシティワーカーというより意外にも年配の方が多く見受けられました。
あとは劇場内で軽食を販売して、観劇しながらお昼を食べられるシステムを導入してくれたら月一で通うのに!と思います。
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