一年ぶりの観劇がとても良かった話。

舞台かんそう

『WALDEN』@Harold Pinter Theatre


元NASA所属の建築家、ステラは、現在は環境アクティビストの婚約者と森の中のキャビンでひっそりと暮らしている。

そこへ、一年間の月面基地ミッションから華々しく帰還した双子の宇宙飛行士・キャシーが訪ねてきたことをきっかけに、姉妹を引き裂いた古傷が疼き出す─。

わだかまりの大元は姉妹間のライバル心であるからして、二人は別に双子である必要はなかったと思うのですが、まあ双子であるから仲違いはさらに不可避で決定的で壊滅的で辛い。どちらも悪くないからなおさら。


二人は言うほどの能力の差があるわけではなくて、能力のある分野が少し違うだけなんですよね!分かる!

そういうときは互いの精神衛生のために、同じ土俵で勝負をしないことが肝要ですが、どちらが土俵を降りるかでどうしてもじゃんけんが発生してしまうしなあ…。


年齢や得意分野の近しいきょうだいがいて、相対的な存在である自分を自覚したことがある人には色々ダメージのある内容だと思います。

特にステラの情緒が水性で常にたぷたぷと危うく揺れていてしんどい。


各所の劇評でも言われていましたが、婚約者のブライアンが包容力の塊のような人で二人のいい緩衝材になっていました。

姉妹が昔のテンポを徐々に取り戻して、ポンポンと独自のペースで会話が進むのをニコニコと見守っていたかと思えば、子供時代の思い出話に「何それかわいい!」と突然乱入して「は?」となった二人に睨まれたり。

キャシーの本名がカシオペアなのも、ブライアンが突っ込まなかったら分からなかった。どちらが姉かは明言されていなかったと思うけど(何となくステラっぽい?)、お父さん、二人ともに星の名前をつけたんだな。


キャシーにステラとのなれそめを聞かれ、グループカウンセリングで出会ったいきさつを話したときに、自分も交通事故で弟を亡くしたばかりで意気投合したと説明したら、一瞬納得しかけたキャシーに「私は死んでませんけど!?」って怒られたのは可愛かった。それはステラ側のメンタルの話であって彼は何も悪くないのに(笑)。

近未来の地球は環境破壊も著しく、大気汚染のせいで都市部では常にマスクを着用しているビジュアルがコロナ禍の現在と重なる演出が皮肉でした。

すでに地球における人類の未来は絶望的で、環境再生を唱えるブライアンのような自然保護団体は、化学や現実を受け入れない不穏分子としてカルト宗教のように危険視されているらしいことも伝わってきてうーわー…という感じ。


他にもスケルトンのスマホ端末や光の加減だけで、絶妙なSF感やNASA本部の様子を演出していたのが素敵だったのですが、調べたら照明デザインはOno Azusaさんという日本の方のようです。


私はこういう地球の危機に宇宙飛行士が出てきたりする話に昔から弱いのですが、今回のラストももれなく好きでした。少し距離を置いた場所から漸く修復できる関係というのもあるでしょうが、それにしても火星は果てしなく遠い。

映像配信されることがあれば絶対にもう一度観たいです。



ちなみに2020年の3月以来、ロックダウン後初の観劇でした。

NHSアプリでのチェックイン、入場前の検温、席は二つにつき一つが空席、お手洗いなどは人数制限されており場内はマスク着用。


Mayumi's Soliloquy

まゆみのソリロクィ

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